コープランドの市民のためのファンファーレ

コープランドの「市民のためのファンファーレ」について。

コープランド(1900年生まれ)という人はアメリカ生まれの作曲家で、同じアメリカ人の作曲家として有名なガーシュウィン(1898年生まれ)よりも2歳ほど年下です。

ガーシュウィン1920年代頃に、アメリカでジャズとクラシックを融合させた新しい音楽を作り、「狂騒の時代」と呼ばれたその時代のアメリカで、一躍時代の寵児となりました。
ラプソディー・イン・ブルーとか、そのあたりの画期的な音楽で旋風を巻き起こしてました)

いっぽうでコープランドは単純明快な、誰にでもわかりやすい音楽づくりをしました。
そういったコープランドの音楽は、その後のバーンスタインや、映画音楽にも少なからず影響を与えているでしょうから、そういう意味では、

アメリカ人が、アメリカの文化にもとづいて、すべてのアメリカ人にとってわかりやすい音楽を作ったという、
真の意味でのアメリカ的な音楽家といえるかもしれません。


コープランドの代表曲
そんなコープランドの代表曲とされているのが「アパラチアの春」。

この時代の芸術音楽は、どうやって難しい構成にしていくか競争しているような、
どんどん難解な路線を追求するのが潮流でしたが、
その中で、時代に逆らうかのように明るいシンプルな曲を発表したのが、
当時の人たちにとって衝撃的だったようです。

発表されたのは1944年、第二次世界大戦がまだ続いていました。
世間が戦争ムードな中で、アメリカ人の素朴な精神、開拓時代の心を呼び起こすような
このアパラチアの春は、一般大衆に広く受け入れられました。


このアパラチアの春もいいですが、
僕が好きなのは、「市民のためのファンファーレ」です。


◆市民のためのファンファーレ
作曲は1942年、アパラチアの春よりも2年前です。
日本と戦争している最中に作曲されたということになります。

Wikipediaによると、「20世紀音楽の中で最もわかりやすい曲の一つ」という、
ほめているのか貶しているのかわからない書かれ方をされています。

もともと戦争に赴く兵士を鼓舞させる曲として依頼されたらしいですが、
コープランドの発案で、結局、市民をたたえるための曲ということになりました。
こうして、万人がやましいこともなく安心して聴ける曲になったということでしょう。

わざわざ一般大衆向けに作られたというところに、コープランドの、音楽は戦争のためでなくすべての人間のためにあるという意思が見て取れるような気がします。

ちなみに、オリジナルの曲名は「Fanfare for the common man」となっています。
直訳すると「普通の男の為のファンファーレ」となってしまいますが、
そこは翻訳の力で「市民のための~」となったことで、
いっそうポピュラーな音楽という面が強調されたように思います。


◆わたしのツボポイント
全部。とても短いこの曲の、全部が好きです。
市民のためのファンファーレには、金管楽器(と打楽器)しか登場しません。
僕は管楽器のことはよくわかりませんが、ただシンプルに「いい曲」だと思うから、
挙げました。
短い曲の中に、腹の底から勇ましさを奮い立たせる力を持っている曲だと感じるとともに、市民が苦しい状況の中で懸命に生きていることを表した、一種の「哀愁」すら含んでいるように思います。

インパクトのある曲なので、オケの演奏会のオープニングなどで使うと雰囲気が引き締まっていいと思うのですが…。


動画。
トランペットが4本も要るので意外と編成が大きいです。


ちなみに、コープランドは90歳まで生きた長寿な方(1990年まで生きてた!)でしたが、
ガーシュウィンは40歳になる前に亡くなっています。
もしガーシュウィン第二次世界大戦の後まで生きていたら、どういう曲を作ったのか、ぜひ聴いてみたいですね。

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グーグルでCOPLANDと調べると、なぜかスタローン主演の映画がヒットします。B級臭のする雰囲気が、コープランドの曲の雰囲気に合っているような、そうでないような。