ラフマニノフ交響曲とティンパニ

ラフマニノフ交響曲2番には、好きな部分がたくさんあって数えきれないほどですが、私は特に1楽章が大好きです。1楽章の終結部分は、勢いにまかせて突き進み、重い1音で締めくくられます。

ところがその1音が問題で、まずは下のスコアを見てみましょう。1楽章の終結部の抜粋です(非常に見づらいですが)。

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上の画像の右下部分、赤枠で囲っているとおり、
最後の音は、低弦がミ(E)を弾くだけなのです。それ以外の音はスコアには書かれていません。

それなのに、色々なCDを聴いてみると、なぜかティンパニの音が入っている録音が多いのです。
ざっと思い出してみるだけでも、とても気まぐれで入れたとは思えないくらい、たくさんのCDでティンパニが入っていた気がします。

そこで、これまで聴いたCDを振り返って、傾向をまとめてみました。
(条件:CDでリリースされているものに限ります。YouTube等の動画で配信されているものは対象外としました。)

ティンパニの音レベル比較:1楽章の最後の1音>

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グラフの横棒は、ティンパニを叩く音の大きさを表しています。10が最大です。
何と、今まで僕が聞いた21枚のCDのうち、実に11枚がティンパニ入りを採用していました。
特に、ビシュコフテミルカーノフスヴェトラーノフヤンソンスの4名は、もう叩くか叩かないかのレベルではなく、いかに強くティンパニを叩くかを競っているかのような、開き直っているかのような印象を受けます。

もう一度言うと、ラフマニノフ自身はこの最後の音は低弦を弾くようにしか指示していません。
確かに、それまでの曲の流れから考えると、最後の音をもっと華やかに鳴らして締めくくりたいという気持ちも、わからなくはないと思います。

しかし、ここはあえて低弦だけで終わらせた方が、それまでとのギャップを強調できて、厳かに締めくくることができるのではないかと思うのです。

 

…なお、私はティンパニ強打勢の演奏は大好きです。意思の強さをひしひしと感じることができるような気がします。