フランクのピアノ五重奏

 フランクのピアノ五重奏が好きです。

全3楽章がすべて短調という、暗い(むしろ深刻な)印象を持ってしまう曲想なのですが、切なさの中に仄かな希望と激しい情熱が埋もれているように聴こえる、大傑作だと思うのです。

日曜の午後、それも雨が降っている静かな時間に聴くと、じわじわと心に沁みてきます。

 

フランクに限らず、ピアノ五重奏というジャンル自体が傑作を生み出すフォーマットのようになっているようで、フランクの他にはシューマンブラームスドヴォルザークフォーレショスタコーヴィチと、ざっと挙げただけでもこれだけ思いつくくらい、作曲家の代表曲となりうるジャンルのようです。(シューベルトは編成が特殊なので除外)

それだけ作曲にエネルギーを使うジャンルなのか、各作曲家とも1~2曲ずつしかピアノ五重奏を残していません。

フランクの場合は、晩年の傑作群(交響曲弦楽四重奏・バイオリンソナタ)の一角として作曲されており、ウィキによると初演は1880年に国民音楽協会だったとのことです。フランク58歳のことです。

…ということは、フランスの器楽曲が急激に近代的に進化する時代の曲だったようですね。事実、フランスの近代音楽史の中では、転換期における最重要の位置づけをされているようです。

ですが、国民音楽協会の発起人のサンサーンスには不評だったようで、彼が初演のピアニストを務めるものの、曲が気に入らないとか何とかで不機嫌になってしまい、演奏が終わると楽譜を捨て去ってしまったようです(ウィキによると)。

フランス人による器楽の向上を目的とした国民音楽協会の発起人のサンサーンスでしたが、新しすぎる音楽には拒否反応を示してしまうという、何とも言えないジレンマがあったわけでしょうか。国民音楽協会はその後、新しい時代のドビュッシー達を支える存在となるわけですから、サンサーンスの心境は複雑なものだったでしょう。

(ちなみにフランクはサンサーンスより13歳も"年上"です。フランクが先進的なオッサンだったのか、サンサーンスが歳の割に保守的な人だったのか…。)

 

<私のツボにはまるポイント>

 1楽章の終盤、弦楽器がメロディを弾いている裏でピアノが音階を駆け上がる部分

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上はピアノ譜の抜粋です。この音階に合わせて、弦楽器は長い音のメロディを奏でます。

この曲の切なさと情熱が見事に融和した、フランクらしさが全開の部分だと思います。この曲がピアノトリオでも、管弦楽曲でもなく、ピアノ五重奏でなくてはならないという強い説得力を持った部分だといえると思います。

 

 動画がありました。


The Ebène Quartet & V. Gryaznov play Franck

12:50頃から盛り上がっていき、13:30頃にピークに達します。
ツボポイントは13:43頃にあります。これらの一連の流れで、何ともいえない高揚感を味わえます。
(それにしても今をときめくエベーヌ四重奏団のライブ演奏がこうも簡単に見られるとは!)

 

私のお気に入り:

タカーチ四重奏団。現代最高峰のカルテットです。

演奏は素晴らしいですが、レジに持って行くのを躊躇してしまうジャケットです。

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